跳んで気になる恋の虫
林には、遠くに聞こえる祭りの音と虫の声しか聞こえない。
「……飛島さん?逃げちゃいましたか……」
虫屋が、両手を目から離してつぶやいた。
それっ、今だっ!
私は助走をつけてジャンプした。
「……えっ?飛島さん?」
大成功!
私は、虫屋の背中に思いっきり飛びついた。
「虫屋が数を数えているとき、急いでケータイで調べたの。あのあと、コオロギのメスはこうするんでしょう?」
コオロギたちは、触覚でお互いを優しく触れたあと、メスは気に入ったオスの背中に……って書いてあった。
「……飛島さん、それじゃあ……」
私は、虫屋の背中に頬をつけたまま言った。
「……好きだよ、大好き」
高く跳ねる鼓動。
詰まる息。