跳んで気になる恋の虫
エピローグ〜それからの私たち〜
バーの向こうに見える空は、どこまでも青く、嫌味なくらいに爽やかだ。
セミの鳴き声が途切れたら、スタートを切ろう。
そう思っているのに、一向に鳴き止んでくれない。
「ナミーー!早くーー!」
「あ、はーい!今行きまーす!」
残って練習するヤツなんか、どうせ私ぐらいしかいないんだから、セミと根比べしようがしまいが時間はいくらでもあると思っていたのは、ほんの2週間ほど前まで。
今日は、バーのところで手を挙げている沙知の他に、私を含めて5人が部活の後も残って練習をしている。
お祭りの後から、部活はずいぶん変わった。
誰もが目の前の目標を達成するべく、最大限の努力をしているのがわかる。
私は、みんなが集中できないと嘆くセミの声をBGMにして助走しはじめた。
最初はゆっくり、それからだんだん速く。
ゆるくカーブを描いてバーに近づき、タンッと踏み切ってジャンプ。
ふわりとミカンの香りのする風に乗って、私はバーを越えた。
トサッと分厚いマットに寝転んで空を見上げると、まだまだ夏は終わらないとばかりに張り出した入道雲が見える。