跳んで気になる恋の虫
虫屋は、ちょっと考えてからカバンの中に手を入れて、温度計を取り出して言った。
「じゃ、これを握ってください」
え?なんで温度計持ってるのよ!
もう、虫屋のバカ!
諦め気分で私は、言われるままに温度計を握った。
「あ、そこじゃないです、もっと下です」
ドキン!
もうないと思っていたのに、温度計を握った私の手に、虫屋の大きな手が重なった。
ふ、不意打ちなんてずるいよ、バカ……。
「あれ?飛島さんの手、熱いじゃないですか。普段冷たいのにこんなに熱いなら、熱があるのか……も……」
虫屋は、きっと耳まで真っ赤になった私をじっと見ている。
私は、顔を背けて言った。
「熱いのは虫屋のせいだ、バカ」