跳んで気になる恋の虫
虫屋が、戸惑いながら口を開いた。
「俺、こんなときどうしていいか……」
「私だってわかんないよ」
手に触れられただけでこんなにドキドキするのに、どうしたらいいのかなんて、もうわからないし、なにも考えられない。
「これが虫なら……統計とかで、次になにをすべきかを導き出すことができるんですが……でも今の、この状況に対する統計は、俺1人の気持ちしかないので……それに従います」
もう、こんなときに何言ってるんだか。
私がドキドキを落ち着けようと、息を吸い込んだ瞬間だった。
……っ!
温度計ごとグッと手を引き寄せられて、私は虫屋の胸の中にすっぽりおさまった。
「む、むし……や……?」
戸惑う私を初めはそっと、次第にぎゅっと虫屋が抱きしめる。
「すいません、いきなり。でも俺の統計では、今はこの選択肢しかありませんでした。飛島さんにも統計を取った方が良かったですか?」
私は、虫屋の胸の中で小さく首を振った。
「……私に統計とっても、答えは同じだから……」
部活もキミとの恋も、少しだけ踏み出すことができた夏休みが、もうすぐ終わろうとしていた。
エピローグend