跳んで気になる恋の虫


「ナミちゃんって、俺が初めてのカレシだよね?初めてが全部俺って、マジで楽しみなんだけど。早くいろいろ教えてやりたい」

「……は、はい。あの……お祭り、行ってくれるんですよね?」

「もちろん。俺を友達に紹介するんだろ?だったらそれまでにちゃんと絆を深めておこうね」

このときは、つきあった先に何があるかなんて全く考えてもいなかった。

みんなと対等になれた喜びは、簡単につきあうことを決めた罪悪感や触れ合うことへの違和感を打ち消すぐらいに大きかった。


「ねえ、カレシってうちの学校?」

「ううん、バイト先の大学生」

「えー!ナミってすごい!」

「そ、そうかな?」

大学生のカレシがいるって言うと、みんなが私を絶賛した。

その度に居心地悪く感じたけれど、悪く言われるよりは全然いい。

だから、カレシの浮気を知って一番最初に思ったことは、私がカレシに浮気されてることをみんなに知られたくないってこと。

私から見れば難ありなカレシでも、友達から見れば素敵なカレシなら、浮気されてることがみんなにバレなければこのままでいい。


そうまで考えたのに、虫屋と関わったせいで、また何か言われるようなことになったら、たまったもんじゃない。

とはいえ、気にはなる。

私を呼ぶ声が、カレシの素っ気ない声とは違って、とっても優しい声だったから。


私は、もう一度周りを見渡した。
よし、今は近くに誰もいない。

やっぱり、返事してみよう。
それだけなら誰かに見られても、適当にごまかせる。

息を吸って気持ちを整え、声を出そうとした瞬間、虫屋の声がまた聞こえた。


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