雨宿り 晴れ気分
思わず頭を抱えそうになったとき、宮野がエスカレーターを上がってきた。

ここで頭を抱えていたら、単なる怪しい女だ。やめよう。

気を取り直して、ただひたすらに前を見ていたら、線路を挟んだ向こう側にバスケ部員AとBの姿が見えた。


奴らは反対側なの?

目を丸くしたら、彼らのホーム側に電車が滑り込んでくる。

風が巻き起こり、雨の雫がバシャバシャと方向を変えるのが見えた。

彼らは電車に乗ると、窓辺に陣取り盛んに手を振っている。


なんだろう?

不思議すぎるんだけど、最後にふたりともガッツポーズをして、電車は動き出した。

それを見送り……何故か、宮野が隣に立っていてギョッとする。


「方向、同じみたいだな」

爽やかな笑顔つきの言葉に、なんと答えればいいんだろ。

ここは普通に、クラスメイトとしてはごく普通に返事をする場面だよね?


「そうみたい。初めて一緒になるね」

「あー……。吹雪以外、歩いて帰るから」

ああ、雨で傘もないから、電車にしたのかな。

そういえば夏場は自転車通学だった。

そんなことも思い出したけど、君はどーして友達の距離に立っているんだ?

顔見知り程度の、クラスメイトの立ち位置じゃないよね?

ちょっと腕を動かしたら、袖触れ合っちゃう距離だよね?

急に話しかけてきたり、真横に立ったり、いきなりどーしたんだよお前。
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