僕等の青色リグレット


もしかしたら大学には行かずに島に残りたいと言っていた理由の半分は、風子ちゃんなのかもしれない。

宮司さんはその気持ちに気が付いていたから、反対したのだろうか。

何もかも背負い込んでしまう晴登くん。人に対して優しすぎる彼に、私は何もしてあげられないのかな。

晴登くんが島の人たちにしてきたように、彼を救ってあげられることはないのかな。


「ねぇ、神楽の鳳ってどんな舞なの?」

「ん?」

「晴登くんは風子ちゃんのために鳳を舞うんじゃないかっていう話を小耳に挟んだの。それってどういう意味か分かる?」

「あぁ、それか」


あくまで噂話だから信ぴょう性はないだろうと思いつつも尋ねると、輝くんは事もなく頷いた。


「毎年1人だけ、選ばれた奴だけに許された舞や。鳳凰の「鳳」は雄、「凰」は雌。その名の通り雄が雌のために踊る、いわば求愛の舞やな」

「求愛の舞……」

「鳳を舞う男は神起祭の夜にだけ、特別な力が宿ると言われている。晴登はたぶん、その特別な力で風子の病を治したいと思ってるんやないか」

「それって」

「もちろん、ただの迷信や。本当にそんな力が宿るかどうかは知らん。けど、晴登なら風子を助けられるんやないかって俺は思ってる」


心に傷を負った風子ちゃん。

自責の念に苛まれている晴登くん。

自らの過ちを悔い苦しんでいる輝くん。

掛ける言葉が見つからないまま視線をすっと前に向ければ、まさに太陽が海の中へと完全に姿を消したところだった。
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