僕等の青色リグレット
そんな小さな決意を胸に水平線を眺めていると、辺りが暗くなっていることに気が付いた。空はすっかり夜化粧を終え、まばゆい星が煌いている。
陽が落ちるまでに帰りなさいとお母さんに言われていたことを思い出した私は、慌てて立ち上がった。
「やばい、帰らないと」
「じゃぁ、送っていく」
「いいの? ありがとう! 実はあの竹林が怖くって……あれ?」
「どうした?」
ふと海に目を向けた先、何かが光ったような気がした。
目を凝らすと月明かりを受けてキラキラ七色に輝るものが、水面にぷかぷか浮いている。
「あそこの、あの光ってるやつ。何?」
「あぁ、あれか。ルアーや、魚を釣るのに必要なやつや」
「ルアー……」
海の上の、七色に光る、虹――――あれだ!
「輝くん!」
「な、なんや」
「あのルアー、1つでいいから私にちょうだい」
♢
喧嘩をした。
彼のことを深く知れば知るほど、支えてあげたいと思った。
日記にはきっとこんな文字が並んでいるのだろうと、思いながらページを捲る。
65年前のおばぁちゃんはこの時、何を感じ何を誓ったのか。
そして、どうやって自分の気持ちと対峙したのか。
あっけなく散った恋心をどう摘み取ったのか、ページを捲る、辿る、指でなぞる。
けれど、
「え――――?」
日記には何も書かれてなかった。