僕等の青色リグレット
6、星に願いを
65年前に、おばぁちゃんが残した日記。
そこに書かれてある内容を辿るように進んで行く私の日々。
偶然なのか、それとも特別な理由があるのか、青春のガイドブックのように感じていたその日記は神起祭の前で途切れていた。
繰り返しページを捲る。
何度捲っても、最後までもう何も書かれていない。
書くのを辞めたのか、何か理由があって書けなかったのか。
聞きたくても、おばぁちゃんに聞く術はない。
ただ、1つを除いて。――――。
「だいぶ、できてきたねぇ」
「そぉやろ、あとは櫓を組んだら終わりや」
「まさか優芽も櫓組に参加する気? 力仕事だよ」
「平気、平気、うち力持ちやけぇ」
神起祭、前日。
祭りの舞台となる神社では、神楽を舞う子供たちを中心に灯篭や提灯の飾り付けが行われていた。ここでも晴登くんや優芽がリーダーシップを発揮して、てきぱき指示を送っている。
私は幼い子たちと一緒にゴミ拾いや、雑草抜きといった仕事を手伝っていた。その中にはカケルくんの姿もある。
ついこの間、無事に赤ちゃんが産まれて、お兄ちゃんになったカケルくんは、嬉しそうにそのことを報告してくれた。
「ふみねぇちゃんも、赤ちゃん見にくる?」
「見に行きたい! もう退院したの?」
「まだ病院だよぉ」
「じゃぁ、退院してからだね」
うん、って頷くカケルくんの笑顔は、今日もお日様みたい。
それがあまりに眩しいから、夏休みが終わると東京に帰るんだということが言えず、「約束ね」と指切りする。