僕等の青色リグレット


帰るまでに退院してくれたらいいなぁ。

そういえばカケルくんのお母さんがいる総合病院は風子ちゃんも入院してるところだったはず。帰るまでに1度お見舞いに行きたいなぁ。

そんなことを考えていると、不意に後ろから声を掛けられた。


「芙海」


振り向かなくても誰だか分かった私は、自分の両頬を軽く叩いた。それから口角をぐいっと引っ張って笑顔を作る。

1週間ぶりに聞いた晴登くんの声はいつもと変わらず優しくて、胸がぎゅっと締め付けられるように痛い。だけど、笑顔。笑顔。

これ以上、晴登くんの悩みの種を増やしたくない。


「この前ごめんな」

「ううん、私の方こそ」

「芙海が謝ることないで、八つ当たりしてしまって本当にごめん」

「そんな! 頭上げてよ」


律儀な晴登くん。

そんなに気に病まなくていいのに。

神楽の最終練習がある彼は本番と同じ衣装を身に付けており、その華麗さに思わず目が奪われる。神様だってこの姿を見れば、きっと虜になってしまうはずだ。


「芙海は優しいな、もう口をきいて貰えんかと思った。伝説の条件集めも全然手伝わんでごめんな。今どれくらい集まった?」

「あぁ、それなら大丈夫だよ、全部集まった」

「え? 全部?」

「うん、輝くんが手伝ってくれたの」

「輝が……?」


本当は、嘘だ。







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