僕等の青色リグレット


「晴登は、母親に似ていてな」

「え?」


おかわりの羊羹を皿にのせて戻って来た宮司さんが、唐突にそんなことを言うから一瞬何のことか分からなかった。

宮司さんの視線を辿り、祖霊舎の近くに置いてある写真に目を向ける。

そこには20代後半くらいの綺麗な女性が映っていた。


「元々この神社は晴登の母親、冴子の実家で彼女が継ぐことになっていたんだ」

「え、じゃぁ宮司さんは、」

「婿養子やよ。親同士が知り合いでな、私は次男やったから冴子の実家へ入ることにしたんや」

「抵抗はなかったんですか?」

「元々、家業に執着があったわけやないし、冴子と結婚できるならそれもいいなと思ってな」


宮司さんはそこでちょっぴり照れ臭そうに笑い、写真の中の冴子さんを見つめた。


「けど、冴子は人一倍責任感が強くてなぁ。宮司という仕事に段々押し潰されるようになってきたんや。晴登が産まれてからは特に、産後で思う様に動かない体と仕事に対してのプレッシャーからで鬱になってしまった」

「そんな……」

「元々、体がそんなに強くなかったこともあってか持病も悪化してしまい、あっけなく死んでしまったよ」


晴登がまだ2歳にもならないうちだったと、宮司さんは目を伏せた。


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