僕等の青色リグレット


「芙―――海!!」


私の名前を大声で呼びながら走ってくるのは、輝くんだった。小柄な体が風を切り、ぐんぐんこちらへ近づいてくる。

何かあったのだろうか?

尋常じゃない様子で私のすぐ傍まで来た彼は、膝に手を当て肩で大きな息をした。


「輝くん、どうしたの?」

「ハァ、ハァ、どうしたも、こうしたもない、で、ハァ、ハァ」

「お、落ち着いて!」

「落ち着いてられるか、ハァ、ハァ」

「お茶飲もう? ね?」


深呼吸、深呼吸。

持っていた水筒のお茶を差し出すと、それを一気飲みした輝くんは濡れた口元を手の甲で拭った。玉のような汗が額から首筋へと流れている。

幾分、落ち着いたように見えた輝くんは、私と目を合わせ、こう言った。


「風子が居なくなった」







風子ちゃんが、居なくなったってどういうこと――?

え、だって入院しているって言ってたよね、大きな総合病院だからどこかで迷子になってしまっているとか? まさか、外に出て行ってしまったってことはないよね?

そもそも病状はどの程度なんだろう、ひとりで歩き回れるのかな。

目を白黒させれいると、今度は私が輝くんに「落ち着け」と言われた。


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