僕等の青色リグレット
「ちょっと飛ばすから、後ろでしっかり掴まっていろな」
「うん」
「輝も、しっかり走れよ」
「……おう」
辺りは、もう暗くなっている。
島は明日の神起祭に向けての飾り付けがほぼ完ぺきに済んでおり、赤提灯が幻想的な光を灯している。
晴登くんの背中に掴まりながら、その風景を眺める。
風が頬を打つ。
キィコ、キィコとなる自転車の音と、地面を掛ける靴の音を聞きながら、ふと。
もし、私が風子ちゃんだったら、どうするだろうと考えた。
「晴登くん」
「どうした?」
「私、思ったんだけど」
優芽やおじさんおばさん、神楽の仲間や自治体の人たちが総動員で風子ちゃんを探しているのに見つからないということは、居そうだと思う所じゃないのかもしれない。
逆に誰もが「あそこはない」と思うところ。
例えば、
「港町じゃないかな」
「え、港町? それはないで、だってあそこは、」
「そう事件のあった場所だよね? だからこそってことはないかな」
2年前の事件の現場となった港町。
本来なら近寄りたいとすら思わないだろうけど、神起祭まであと数時間となった今、気持ちの踏ん切りをつけたいとしたら最適な場所なんじゃないだろうか。