僕等の青色リグレット
「風子!」
大声を張り上げた晴登くんは、自転車を私に預けて勢いよく走り出した。
防波堤の上を風子ちゃんがふらふら歩いている。
白いワンピースの裾を揺らし、時折踊るように軽いステップを踏む彼女の姿はまるで映画のワンシーンのように綺麗で見惚れた。
その風子ちゃんが、ゆっくりこちらを振り向いた。
「はる、と?」
「何やってんだよ、みんな心配してんぞ」
「心配? どうして? それよりウミホタルが見当たらないの。ここじゃなかったかな?」
「そんなんいいから、病院に帰ろう」
「あ、あっちの方に行ったら見えるかも」
晴登くんの言葉を無視して、風子ちゃんは50メートルほど先にあるテトラポットを指さしたが、その際にバランスを崩したようでよろめいた。
すかさず、晴登くんが両手で支える。
「帰ろう、風子」
「もうちょっとだけ」
「みんな心配してるって言ったやろ」
「約束したじゃない!」
「……風子?」
「3人で一緒に見ようって、ウミホタル。約束したよね」
最後は消えそうな声で言った風子ちゃんは、晴登くんの腕の中でさめざめと泣きだした。
痩せたなぁ、風子ちゃん。
今にも折れてしまいそうな細い体を、晴登くんがしっかり抱きしめてあげている。