僕等の青色リグレット
優芽に連れられて来た場所は、おばぁちゃんの家から西に15分ほど歩いた山の中腹にある神社だった。
長い石段を登り赤い鳥居をくぐった先、立派なクスノキがある境内で、優芽と同じように白い袴を着た10代の子供たちが何やら踊りの練習をしている。
その手には弓や扇子、名前は分からないけど鈴がたくさん付いた棒や太鼓など実に様々で、笛を吹いている子もいた。
「これが神楽?」
「そう。神様に捧げる舞だから、神楽」
「へぇ」
「芙海はいつも夏祭りの前に帰ってたから、知らんかったやろ」
「うん、初めて見た」
「これは神起島に代々伝わる儀式で、夏祭りに毎年10歳から17歳までの子供たちで舞うんや」
「へぇ……!」
「あ、見ときぃや」
早口で優芽が言ったあとすぐに、ドンッという大きな太鼓の音が聞こえた。
すると、それまで各々自由に練習をしていた子たちが動きを止めて、境内の奥にある拝殿に体を向けて静かになる。
何が始まるのだろう?
もう1度太鼓の音が聞こえると、空気が変わるのを感じた。
「(あれは……)」
やがて衣擦れの音と共に拝殿に面を被った人が現れ、舞を踊り始めた。
なんて繊細で優雅な動きなんだろう? 瞬きするのも忘れてしまうほど美しく、そして力強い神楽の舞に心ごと持っていかれそうになる。
時折、ダンッと板の間を大きく踏み鳴らす音が厳かな境内に響く。
優芽の言っていた通りだ。
背筋がシャキとする。