僕等の青色リグレット
「約束って、2年前のことか」
ふと、気が付くと私の隣に輝くんがいた。
晴登くんたちとは少し離れたところで、私にだけ聞こえるトーンで呟く。といっても風向きの関係でこちらの声は向こうに聞こえそうになく。
輝くんもあっちに行かなくていいの? そう尋ねると、彼は首を左右に振った。
「風子のやつ、もしかしたらあの事件を忘れてしまったんじゃ」
「どうかな? 単にあの2年前の日をやり直したいだけかもよ」
「やり直したい?」
「確かにあの時、ウミホタルを見に行こうと誘ったのは輝くんだったかもしれないけど、見に行きたいと思ったのは風子ちゃんも晴登くんも同じなんじゃないかな。だから、2人とも輝くんの嘘を責めないんだよ」
「……」
「そして、もし私が風子ちゃんだったら、嫌な思い出はきれいさっぱり忘れて、良い思い出に塗り替えたいって思う。本当ならここで綺麗なウミホタルを見て3人で笑ってたはずでしょう?」
ね? って輝くんの方を見ると。
彼は涙をボロボロ流して、風子ちゃんの姿を見つめていた。
風子ちゃんを抱きしめている晴登くんも、目にいっぱいの涙を浮かべている。
あの時、ああしていれば、こうしていれば……たらればを言い出すとキリがないけど、それはたぶん気持ちを整理する上では大切なプロセスで。
自分の気持ちや傷と向き合うことで、人は大きく成長できる。
越えられそうにない壁だって、足元に1つ1つ後悔を積み上げることで踏み台は自然と高くなるはず。
彼らの涙が、そのことを私に教えてくれた。