僕等の青色リグレット
7、僕らの青色リグレット
「うん、良く似合っている」
「本当? 嬉しい」
「芙海に着て貰えておばぁちゃんも喜んでいるわよ。その浴衣ね、おばぁちゃんのお気に入りだったのよ」
「そうなんだ」
神起祭、当日。
お母さんに浴衣の着付けをしてもらった私は、鏡の前でくるり回ってみせた。紺地に紫陽花の模様が可愛い。帯はオレンジ。こちらは夕日に染まる海のと同じ色で綺麗。
その帯の後ろに、神起祭と書かれたうちわを挿し、あとは髪を結えば準備完了だ。
あらかた処分した家具の中で最後まで残してあった化粧台に座り、鏡越しに家の中を見回すと、寂しさがこみ上げた。
「何にもなくなっちゃったね」
「そうね、こうして見ると広い家だったわ」
「次、住んでくれる人、大事にしてくれるといいなぁ」
「きっと大事にしてくれるわよ」
おばぁちゃんの家は、売りに出すことが決まった。
想い出がいっぱい詰まったこの家を他の人に渡すのは、とてもとても悲しいことだけど、住み手がいないまま置いておくわけにいかず。
家は住む人がいてこそ幸せなんだ、という生前おばぁちゃんが言っていたこともあり、その決意に至ったらしい。
「まだ、ひょっこりその辺からおばぁちゃんが出てきそうなのに、売りに出したらそれもなくなるんだね」
「何言ってんの、おばぁちゃんはいつも芙海の中にいるわよ」
「私の中……?」