僕等の青色リグレット
鏡越しにお母さんと目が合う。
「芙海がおばぁちゃんを忘れない限り、おばぁちゃんは芙海の中にいるのよ」
「忘れない限り……うん、ずっと忘れないよ」
「じゃぁ、ずーとおばぁちゃんと一緒ね。どんな時でも見守ってくれるわ」
「うん」
「私も、お母さんのことはずっと忘れないわ」
美容師になるのが夢だったお母さんはその昔、おばぁちゃんの反対を押し切って島を出たらしい。今でこそ専業主婦をしているけど、サロンの中では売れっ子のスタイリストだったとか。
そんなお母さんのことをおばぁちゃんはしばらく許さなかったらしいけど、陰では『うちの娘は一流の美容師だんだよぉ』と、よく自慢していたらしい。
お母さんそれが恥ずかしく、時にプレッシャーに感じるため嫌だったけど、自分のことを誇りに思ってくれるおばぁちゃんの気持ちは純粋に嬉しかったという。私も同じ。
プリマになる夢を追いかける私を応援してくれるおばぁちゃんの気持ちが嬉しかったし、大好きだった。そして、これからも、ずっと。
「さぁ、可愛くできた」
「さすが! ありがとう」
「ねぇ、芙海」
「うん?」
「最大の理解者が心の中にいるということは、大きな支えだと思わない? 何があってもどんな結果になっても味方してくれるの。姿が見えなくても、話しができなくても、おばぁちゃんは笑って頷いてくれるわよ」
「お母さん……うん、そうだね」