僕等の青色リグレット
「気を付けて行ってくるのよー」というお母さんの声を背中で聞きながら、私は祭り会場である神社へと向かった。
今日は初日ということで、神様を呼び起こす儀式が行われるらしい。これは宮司さんがするもので、晴登くんや優芽たちの神楽は明日だ。
その儀式が終わり次第、鉢伏山を登る予定で持ってきた伝説を叶えるアイテムが入っている袋を肩に下げ歩いていると、「あら、芙海ちゃん」と声を掛けられた。
「あ、こんにちは!」
そこにいたのは笑顔がとても上品な三笠のおばさんと、おじさんだった。2人が一緒に出歩いてる姿は珍しく、にこやかなおばさんに比べ、おじさんは仏頂面をしている。
「こんにちは、素敵な浴衣ねぇ」
「ありがとうございます、おばぁちゃんの浴衣なんです」
「まぁ、そうなのぉ! 良く似合っているわ、ね、お父さん」
おばさんに話を振られたおじさんは、眉根を寄せながらも「あぁ」と短く頷いた。
表情こそは硬いけどこうして一緒に歩いているところを見ると、以前よりも関係が上手くいっているのだろう。おばさんの表情も一段と明るくなった気がする。
晴登くんのお陰だね。
「猫ちゃん、どうですか?」
「もぉ~とってもやんちゃな子で、家の中を走り回っているわ。可愛くってね」
「お前はちょっと甘やかしすぎだ」
「あら、お父さんだってぇ。夜中にこっそりおやつをあげているの、知っているんですからね」
「それは、ナッツが欲しがるから」