僕等の青色リグレット
あの猫ちゃんは、ナッツと名付けて貰ったんだ。
三笠の夫婦に可愛がられて幸せに育っているんだろうなぁ。それにおじさんもおばさんも幸せそう。かなり強引な作戦ではあったけど、こうした姿を見れて私も幸せ。
「良かったらまた遊びにいらっしゃい」と言ってくれたご夫婦に挨拶をして、私は先を急いだ。
だけど、着慣れていない浴衣は歩きにくく、思った以上に下駄の鼻緒が指の間に当たり痛い。
せっかく着せてくれたおばぁちゃんの浴衣だけど、優芽たちのように動きやすい法被の方が良かったかな。そう思い下を向いた時だった。
「芙海ちゃん、ちょっとその下駄を貸して」
「え? あ……絢子さん!」
声を掛けてきたのは、伝説を呼び起こすための方法を記したメモをくれた麻子さんの娘さん、絢子さんだ。
絢子さんの隣には車椅子に乗せられた麻子さんもいて、どうやら2人も祭りを見に行く途中らしい。神起祭が大好きな麻子さんは、遠くから聞こえてくる太鼓の音に体を合わせ揺らしている。
「足が痛むのでしょう? 鼻緒を伸ばせばマシになるわ」
「伸びるんですか、これ」
下駄を片方脱いだ私は、それを絢子さんに渡した。
「引っ張る程度だけど、はい、履いてみて」
「すごい、さっきと全然違います」