僕等の青色リグレット
「どうだった?」
「すごいよ、圧倒された」
「そうやろ、かっこいいやろぉ」
あっと言う間に1つの演目が終わり休憩に入ると、宮司さんの計らいでアイスキャンディーが配られた。
私はただの見学なので遠慮するつもりだったけど、「人数分より余っているから」と言われ有り難く頂くことにした。
緑豊かな木々が生い茂った山の上でも、じんわり汗をかくほど暑い。
何もしてなくても暑いのだから、舞を踊っていた人たちはもっと暑いだろう。さっきの人なんか面をつけていたから尚更だろうと、その人が休んでいる方に視線を向けた私は思わず声をあげた。
「あの人っ……!」
「あぁ、あれはここの神社の息子で、晴登(はると)って言うんだ、私らと同じ歳やよ。どうした~? さっきの舞で惚れたかぁ?」
「そんなんじゃないよ、」
そんなんじゃないけど、びっくりした。
海に落ちたとき、助けてくれたその人だったから。
「晴登は今年の夏祭りで大役を任さているんだ」
「大役?」
「神楽の鳳といって、それは大事な大事な演目だ」
「そうなんだ、大変そうだね」
「あいつなら大丈夫だぁ、なんせ神童と呼ばれてる奴だからな」
神童? 首を傾げると、今度は優芽が大きな声を出し私の手の辺りを指さした。
見ると持っていたアイスキャンディーが溶けて地面に落ちるところだった。