僕等の青色リグレット
たった数秒、鼻緒を引っ張っただけなのに、まるで別の下駄に変えたように履きやすくなっている。だけど、これはあくまで応急処置で一番良いのは自分よりも足の大きい人に10分ほど履いてもらうことらしい。
履き方もかかとが少し出るくらい、あまり奥まで足を入れない方がいいとアドバイスをもらい、ついでに絆創膏まで頂いた。
「皮がむけちゃう前に貼っといた方がいいわねぇ」
「すみません、何から何まで」
「いいえ、いいえ」
答えたのは、麻子さんだった。
多分それは偶然に言葉が合っただけで、私と絢子さんの会話に入ってきたわけじゃないだろうけど、あまりのタイミングの良さに思わず目を合わせて笑う。
麻子さんはとっても機嫌が良いみたいで、舞を躍るように両手をクルクル動かしていた。
「それはそうと、アイテムは全部見つかったの?」
「はい」
「そう、いよいよ今日ね」
「緊張します」
「大丈夫、きっと上手くいくわよぉ。ね、お母さん」
また、返事してくれるだろうか。
車椅子に座る麻子さんを、私と絢子さんでしばし見つめるけれど、反応はなく。やっぱりさっきのはただの偶然だったのだろうと、脱力した時だった。
「いっしょうけんめぇ、願えば叶うよぉ」