僕等の青色リグレット
火柱が立つように井桁の炎が高く上がった瞬間、四方から拍手が飛んだ。
たった今から明日の夜までの24時間、大神様は起きて人々との交流を楽しむそうだ。その間は本殿も解放され、誰でも中に入っていいらしい。
挨拶に行こうと腰をあげた優芽に「待って」と告げて、帯の隙間に入れてあったスマホを取り出す。
それから1本のメールを送信した私は、伝説が成功することをお願いするため、本殿へと向かった。
♢
辺りはすっかり暗くなっていた。
先ほどまで賑やかな声が聞こえていた神社も今は静かになり、宮司さんと火の番をする人だけが残されているという。
以前は観光客が多く訪れていたため夜通し屋台が出ていたが、2年前の事件があってから辞めてしまったらしい。今は島の人間だけでひっそり祭りを祝う。
どことなく寂しくもあるが、神様にとってはその方が良いだろう。
「(それにしても、本当に暗い)」
私は神社から遠く離れ、ひとり鉢伏山を登っていた。
登るといっても標高はそれほど高くなく、島の人にとってはハイキングコースくらいの緩やかな傾斜だが、慣れない下駄では厳しく。
また明かりも何もない山の中で1人歩くのは怖くて、風で木の葉が揺れるだけで心臓が口から出てきそうになる。