僕等の青色リグレット
せっかく絢子さんに絆創膏を貰ったけど、その効果も虚しく足の皮はめくれていると思う。暗くて確認できないけど。
輝くんはなぜか自分が履いていた草履を脱いで私の方へと、足で寄せた。
「そんなんで上まで行けんやろ。俺の草履の方がマシやで履いてけ」
「え?」
「伝説を叶えに行くんやろ」
「どうしてそれを……?」
確か、そのことは輝くんに話してなかったはず。だとしたら、
「晴登に聞いた。って、別にあいつがペラペラ喋ったわけやないで、芙海がルアーを欲しがった話を俺がして、」
「うん、分かってる」
「芙海には世話になったし、暗いところ苦手やろ? だから心配になって」
照れ臭そうに俯く輝くん。
そうとは知らず、幽霊扱いしちゃってごめんね。
「ありがとう」
「上まで付いて行こうか?」
「ううん、大丈夫! あ、でも草履は貸して。今気がついたんだけど、猛烈に痛くなってきた」
「今頃、気付いたのかよ」
慣れない恰好はするもんじゃないね。
そう笑う私に輝くんは「でも、似合ってるで」と、またも俯きながら言ってくれた。
「じゃぁ、行ってくるね」
「おう、気をつけてな」
夜は長くない。
一刻も早く山頂へ行って伝説を叶えるための準備をしなくては。それに約束した時間もある。輝くんに手を振り再び歩き出そうとしたところで、「ーー芙海」と腕を掴まれた。