僕等の青色リグレット
晴登くんの瞳がゆらりと揺れ、一筋の涙が落ちた。
声を詰まらせながら何度も「ありがとう」と言う彼は、幼い子供の戻ったような顔で私の手を握る。大きくて温かい手。
この手は抱えきれないほどの物を、持っていたよね。甘えることを知らず今まできっとたくさんたくさん我慢してきたよね。
宮司さんはその重荷を解いてやろうとしたよね。
でも、ちょっと不器用だった。
そんな彼らを冴子さんは、優しい表情で見つめている。
「素敵な夜を」
3人にそう囁いた私はそっとその場所から離れた。
晴登くんはもう大丈夫。きっと最良の方法を見つけるだろう。
みんなが笑顔になれる方法。
いつか彼が立派な宮司さんになった時、神起こしの儀式を傍で見ることができるかな?
見れたらいいなぁ、できれば1番近くで。
そんな少し先の未来を思い描きながら下山していると、さっき輝くんと別れたところ辺りに人影があることに気が付いた。
もしかして輝くん、待っていてくれたのかな。
伝説を叶えられた達成感と1人で歩いていた心細さが合わさり、妙なテンションになっていた私は影があるところまで小走りで向かった。
すると、そこにあると思ったはずの影が見当たらない。
あれ? おかしいな。
もしかして、今度こそ本物の幽霊……?