僕等の青色リグレット


厳密にいうと、さっきの冴子さんだって幽霊なんだろうけど、自分が呼び寄せたということもあり不思議と怖さは感じなかった。

そりゃあ、冷静に考えてみれば人生初の幽霊で、暗闇にぼんやり浮かんでる姿はホラー以外何者でもないんだけど、知ってる人の身内だし、悪さをするわけじゃないし。

だけど、全く知らない人の幽霊となれば、さすがに……。


『ダレガ、ユウレイダ』


は? え、今の、何? 空耳じゃないよね?

突然聞こえて来た声に心臓が口から飛び出しそうになる。誰が幽霊だって言わなかった? ってことは幽霊じゃない? なんだそれなら良かった。幽霊じゃないなら……。


『オマエガ、フミ、カ』


そこに居たのは、明らかにこの世の者じゃなかった。

黄金のオーラのようなものを纏い、透けそうなほど薄い(実際に透けている)体を朱い着物で包み、長い銀色の髪を一つに束ねている女性。目元は涼し気で口を開いているが、声はどこか違うところから聞こえてくる気がする。



『フミジャナイノカ』

「……芙海ですけど、えっと、あなたは?」

『ワタシ、ハ、カミだ』


神様?

そんなまたまた冗談を、って言いたいところだけど、既に目の前で起きている超常現象に疑う余地なんてなく、本人が神だと言うならそうなのだろう。

それにさっき神起こしの儀式を行ったばかりだ。

1年ぶりに目覚めた神は今日から明日の夜まで起きて島のあちこちに出没すると、宮司さんも言っていたし。


『ドウシタ、オドロカナイノカ』

「びっくりですけど、色々あって麻痺しているというか。ううん、会えて嬉しいです。伝説を叶えてくれてありがとうございます」

『ワタシノチカラデハナイ。スベテハ、ハナノガンバリダ』

「ハナって……」


おばぁちゃんのこと?




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