僕等の青色リグレット
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境内の雰囲気がガラリと変わった。
和やかな時は一変、緊張と期待に包まれる人たちの耳に、笛の音が届く。
いよいよ、神楽が始まるんだ。
拍子木を合図に白い袴姿のちびっ子たちが、わぁっと飛び出てきた。カケルくんの姿もある。彼らは神様のご機嫌を伺う舞というものを披露することになっている。
私は両手を胸の辺りで組んで、その姿を見つめた。頑張れ、頑張れ。
練習に練習を重ねた舞はどの子もピッタリと合っていて、驚くほどに綺麗。真剣な眼差しの奥にキラキラした輝きがあって、私は既に泣きそうになった。
カケルくんたちの次は、優芽や輝くんだ。
これまた周りの雰囲気を変える力強い動きで観客を圧倒する彼らは縦横無尽に境内を駆け回り、神様を喜ばせる舞を見せつけた。
そして最後に――。
それらすべてを掻っ攫うような登場を魅せたのは、晴登くんだった。
綺麗なんてもんじゃない。美しいなんて言葉だけでは表現しきれない。頭の先から指先、足の先まで神経の行き届いた舞に人々は息をするのも忘れて見惚れる。
今年も目覚めてくれた神様へ感謝の舞。
神起島の平和を願う舞。
人を愛する鳳の舞、人に愛される凰の舞。
魅了される人々の中に風子ちゃんの姿を見つけた。
晴登くんの雄姿を焼き付けるように見つめる横顔は、とても優しい。
今宵、神様の力を貰った晴登くんは、願いを叶えるだろう。
風子ちゃんの心の病が癒えますように、と。
私も願うよ、そんな2人がずっと幸せでありますようにって。