僕等の青色リグレット
「晴登の家は神社で厳しかったし、子供の頃は大人しい子だったけぇ遊びに誘っても滅多に顔を出さんかったんよ。だけぇ、芙海は知らんかったんやねぇ」
「なるほど、さっきの輝って子は?」
「あいつは漁師の子で、夏になるとおじさんと一緒に朝から晩まで船に乗ってる」
「へぇ」
「だけぇ、遊びに誘って出てくるのは、私らみたいな暇な子だけだ」
と、優芽が朗らかに笑う。
さっき輝くんを悲しそうな目で見ていたように感じたのは、気のせいかな。
ダラダラと歩く私たちはその角を曲がれば家が見えるというところまで戻ってきた。
すると、ほんのりカレーの匂いが漂ってきて、先ほどまで「お腹すいた」を連発していた優芽がガッツポーズをした。
「晩御飯食べたら、そっちに行くで」
「私が行こうか?」
「あー、今うちのお父さんとお母さん喧嘩しよるから、近寄らん方がいいで」
「あらら、そうなんだ。風子(ふうこ)ちゃんは帰って来てる? 全然会わないんだけど」
風子ちゃんというのは優芽のお姉ちゃんで、今は島を離れ本土で独り暮らしをしながら大生に通っている。
極たまにしか会わない私のことも妹のように可愛がってくれる優しい人だ。また、島1番の美人という定評があり皆の憧れのお姉さんでもある。
夏休みだから帰省してると思ったんだけどな。
「あぁ、ちょっと遠くにいるんだ」
「そうなの?」
「うん、そういうことだから、後で行くわ!」