僕等の青色リグレット


「あ、しまった」



本棚にあるアルバムを引き抜こうとして、同時に何かがばさりと落ちた。

ぎゅうぎゅう詰めというわけでもないのに、くっ付いていたのだろうか。拾い上げると、それはB5サイズのノート。

随分年季が入っているように見える。というのも、全体的に黄ばんでカピカピになっているし、表紙に至っては書いてあったであろう文字が所々薄く消えているからだ。

一体、どれくらい昔のものだろう?

興味を惹かれた私はアルバムを本棚に戻し、ノートの中を開いた。



「これって、日記……?」



横書きの線が入っているノートには、日付と天気、その日にあったことが簡潔に記されてある。例えば、6月4日晴れ、草むしりをした。といった具合だ。

それだけなら日記というより忘備録ともいえるが、次のページには暗号のような文字や絵、さらには押し花や貝殻などが貼り付けられており、小さなメモ書きも残されていた。

そして、もう1つ大きく注目するべき点に、『昭和27年』と記された文字だ。

すなわち今から65年前。年号が違ってもスマホで調べればすぐに計算できる。だけども、いまいちピンと来ない。

今からずっとずっと昔、この日記を書いていた人物はどんな思いで生きていたのだろう?


よれよれになったページを指でなぞる。

胸に抱き寄せてみる。

どうして今頃になってこの日記が見つかったのか分からないけれど、何か特別なものを感じた私はこの部屋の主、祖母のことを思い浮かべながらページを捲った。








【7月26日 晴れ 今日、彼と出会った】
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