僕等の青色リグレット
びっくりして顔をあげると、晴登くんが拝殿の奥から姿を見せた。
私がお供えしたイチジクを見つけると彼は、「初物の果物は神様が喜ぶんだ」と柔らかい笑みを浮かべる。表情と同じように声も穏やかで聞き取りやすい。
衣擦れの音をさせて歩く姿は、昨日の優芽と同じ袴でも全然違うなと思いながら、持ってきたパーカーを差し出した。
「あの、この前は助けてくれてありがとう」
「わざわざ洗って持ってきてくれたんか、えっと」
「北里 芙海っていいます」
「北里……? あぁ、ハナさんところの」
晴登くんは合点がいったように頷いて、「一周忌やったねぇ」と、さっきの輝くんと同じようなことを言う。
そういや、さっき輝くんは何を言いかけたのだろう?
「俺は、大田和(おおだわ) 晴登。ここの神主の息子で、今は神職見習いってとこ……って、そんな情報いらんか」
「ううん、偉いね」
「そうでもないで、ポンコツやって毎日叱られよる」
ふふっと笑った晴登くんは、おいでおいでと私に手招きをして拝殿の脇にある小さな階段のところで「待ってて」と小声で言う。
そこはちょうど日陰になっていて、ひんやり涼しい。
言われたように待っていると、彼はアイスキャンディーを2本持って戻ってきた。