僕等の青色リグレット
2、老夫婦と、子猫


でも、まさか65年前の日記に書かれてあることと、今現在の私の日常が合わさるなんて、おかしなこと。ただの偶然としか思えない。

おばぁちゃんは、預言者だったとか……?

いやいや、そんなの聞いたことないし。

もしかしたら、私が無意識のうちに日記を書いてるとか?

日付を65年前に変えて――?

いやいやいや、もしそうだったらホラーだ。


「じゃぁ、この日記は何なんだ!」

「日記がどぉしたの?」

「うわぁ」



びっくりしたぁ。

縁側で寝転んでいた私の前に和枝おばさんの顔がドアップで現れ、庭に落ちそうになる。実際に片足は芝生を蹴った。

今日も庭になった果物を採っていたおばさんは、「驚かせたね」と笑いながら、ブルーベリーをお皿に入れてくれた。1つ摘まむと甘酸っぱくておいしい。


「それで? さっき何を言ってたの?」

「あぁうん。あのね、おばぁちゃんって昔、日記を書いてた?」

「日記? さぁ、どうだったかねぇ。そんなマメな人ではなかったけどねぇ……あっ、でも昔、まだおばぁちゃんが若い頃、そぉね、今の芙海ちゃんくらいの年齢かな? 交換日記をしたことがあるって言ってたような」

「交換日記?」

「そうそう、もしかしたら初恋の人だったりしてぇ」


和枝おばさんは両頬に手を当てて、乙女のようにふふっと笑う。

ごちそうさま、と言い残し立ち上がった私はおばぁちゃんの部屋がある2階へと駆け上がった。

畳の匂いが香る部屋の窓から夏の日差しが気持ちいいほど差し込んでいる。

本棚から机の引き出しへと場所を変えた日記を取り出し、ぱらぱらっと捲る。さっき和枝おばさんが言っていたように、これが交換日記だったなら……と、目を凝らしてよく見る。

だけど、どう見ても筆跡は1つしかない。

和枝おばさんの言ってたのと、違うのかな。





< 24 / 155 >

この作品をシェア

pagetop