僕等の青色リグレット
気が付くと夕方になっていた。
あまり遅くなるとお母さんに怒られるので、おいとますることを告げると、三笠のおばさんはさぞ残念そうにしながらたくさんのお土産を持たせてくれた。
子供がいないから寂しいのかな。夏休みが終わるまでまだまだ日にちがあるので、また遊びに行くことを約束して家に戻ると、優芽が来ていた。
お風呂あがりなのか頭にタオルを巻いた彼女は、畳の上で漫画を読んでいる。
「おかえりぃ、遅かったね」
「うん、親戚のおばさんがなかなか離してくれなくて」
「三笠のおばさんやろぅ? あの人、話が長いもんねぇ」
「知ってるの!?」
「知ってるもなにも島の人間なら大体みんな知り合いだぁ」
それは言い過ぎだ。島には2千人近くいるんだから。
だけど、いわゆるご近所と呼ばれる範囲(とは言っても軽く1キロは離れている)に住んでいる人なら知ってて当然だろう。
「あそこのおじさんにも会った?」
「会った、会った」
「全然喋らんかったやろ、あのおじさん、こじらせとるんよ」
「こじらせてる?」
「今流行ってるだろ、こじらせ女子。あれのおじさんバージョンだぁ」
なんだそれ。
首を傾げると、優芽は頭のタオルを外しながらニヤニヤ笑う。
それから扇風機の前に移動して「あ”-」と声を震わせ遊び始める。子供か。
ほんのり茶色で自然なウエーブがある髪はお人形のようで、羨ましいなと思っているところで、階下からお母さんの「スイカ切ったわよー」の声が聞こえ、私たちは競うように下へ降りた。