僕等の青色リグレット
1、おばぁちゃんの日記
「芙海(ふみ)ちゃん、あれま大きくなってぇ! 何歳になった?」
「17歳だよ」
「そぉね、都会の子は大人っぽくなるのが早いねぇ」
「おばさん、それ去年も言ってたよ」
久しぶりに親戚の人に会うと気恥ずかしい気持ちになってしまうのは、どうしてだろう。
島に到着した昨日から何人にも同じようなことを言われ、同じような返しをしているような気がする。そして照れ隠しもあって、二へッと笑い返すのだ。
私たちより1日遅れて祖母に家にやってきた和枝おばさんはそんな私を見て、「やっぱり女の子は華があっていいねぇ」と、うちのお母さんに視線をやった。
「それがもう反抗期まっさかりで、大変なのよ」
「これくらいの歳の子はぁ、みんなこんなもんだよ。ねぇちゃんだってぇ、芙海ちゃんと同じくらいの歳の時はぁ、荒れてたよぉ」
「そんなことないわよ」
「そんなことあるってぇ、ねぇ、芙海ちゃん」
話を振られて、またも曖昧に笑い返す。すると、そんな仕草でさえも和枝おばさんの目には”お淑やか”に映るらしく、羨ましがられた。
和枝おばさんはお母さんの妹で、ここから少し離れた民家に住んでいる島の人間だ。
小柄でお喋り好きで、島人らしく日に焼けた肌にはところどころシミが目立つけど、笑顔の可愛い人だと思う。
うちのお母さんはどちらかというとクールでさっぱりとした性格をしており、祖母のDNAを引き継いだのは間違いなく和枝おばさんの方だ。
「遠いところよぉ来てくれたねぇ、暑かったでしょ」
「全然、やっぱり島は涼しいわ」
「そりゃぁ、東京に比べたら涼しいよねぇ。昨夜は眠れた?」
「寝れた寝れた。お布団用意してくれたの和枝でしょ? ありがとう」
「何言ってんのぉ、当然だわ」