僕等の青色リグレット
ちなみに、昔ってどれくらい前なのかを聞くと、年号が「昭和」の時代からだというからことさら呆れてしまう。
だけど、おじさんもおばさんも、きっとこのままで良いとは思ってないはず。
2人が住んでいるあの家には可愛らしいお花がたくさん飾られていて、私はてっきりおばさんの趣味でそうしていると思っていたけど、花を買っているのはおじさんの方だということに、さっきのレジで気が付いた。
ここの商店でお花を買って、それをおばさんが飾って、会話がなくても意思が通じ合っていればいいのかもしれないけど、おばさんはとても寂しそうで。
「うーん……」
「どうしたぁ? そんな悩んだ顔して」
「うわぁ!」
商店のすぐ外のところにあるベンチに座ってアイスを食べながら考え事をしていた私は、不意に掛けられた声に飛び上がった。
その声の主は晴登くんで、彼は目をまん丸にさせて「驚かせてごめん」と首の後ろに手を当てた。今日は黒いTシャツとデニムパンツといったシンプルな装いで、大きなリュックを背負っている。
「いや、私がぼんやりしてただけだから。こっちこそ大きな声を出してごめんね、えっと、今日はどこかの帰り?」
「うん、町内会の集まりで山登り」
「山登り!? 大変だね。それもお手伝いの一環?」
「まぁ、そんなとこだわ。でも、山登りは好きだし、おっちゃんやおばちゃんと話すのも楽しいから大変やないよ」
「へぇ……」
「で? 芙海は何を悩んどるん?」