僕等の青色リグレット
私の顔を覗き込むようにして視線を合わせた晴登くんは、ニコッと笑ってから大きなリュックを背中から下ろしベンチに座った。
それからタオルで汗を拭き、ペットボトルの水を美味しそうにごくごく飲む。
その一連の動作がCMに出てくる俳優さんみたいに爽やかだなぁ、と思っていると再び目が合った。その目が「言いなさい」と言っている。
「あのね、三笠のおばさんのことなんだけど」
「あぁ、公民館のところの」
晴登くんも三笠のおばさんのことを知っていて、私が感じたことを話すと、黙ってじっと聞いてくれたあとに「そうだなぁ」と胸の前で腕を組んだ。
夫婦のことなんて他人が口出すことじゃないし、ましてや若年者である私にできることなんて何もないのかもしれない。それでも、おばさんの寂しそうな瞳や、おじさんの心苦しそうな眼差しを見ると何かしてあげたくて。
「芙海は優しい子やなぁ」
「そんなことないよ、ただのお節介だと思う」
「そのお節介でも、今まで焼いてくれる人がおらんかったんやろう、あの夫婦には。わかった、俺も協力する」
「本当!? ありがとう! でも、何を……」
情けないことに、私の頭には良策など浮かばずノープランなのだ。