僕等の青色リグレット
三笠の夫婦の会話を増やすためには、まず仲直りさせるのが1番だと思うけど喧嘩の原因であるおじさんの口下手を直さなきゃ事は進まないだろう。
だからと言って、もう何十年もそうやってきた人に今更「直せ」と言うのも難しい気がする。
趣味が一緒とか、好きなものとか、楽しめることに共通するものがあればいいんだけど、そういうのがあれば、ここまでこじらせてないよね。
じゃぁ、今から何か見つけるってのは、どうだろう。
自然と会話が増えるもの、例えば、
「ペットを飼うとか……?」
「俺も今、同じこと考えた」
組んだ足の上に肘を乗せて頬杖を付いていた晴登くんがニヤリと笑う。
いやいや、でもまさか、そんな簡単には、だって。
「名案だと思うで、2人で可愛がるうちに会話も増えるし。実際、子供が離れてからペットを飼い始めた夫婦をいくつも知ってる。そういや、ちょうど子猫の里親を探してるって人を知ってるから、貰いに行こう」
「でも、勝手に決めるわけには……貰ってくるって言っても物じゃなくて命だよ」
「無責任に言ってるわけやないで。どうしても無理やったら、俺の家で飼うから。既にたくさん住んどるけぇ1匹増えたところで変わらん」
「晴登くんって見かけによらず強引なんだね」
「あの夫婦が実は動物好きなんを知ってるんよ。おばさんは、うちの神社で猫の相手をよぉしてるし、おじさんの方は野良猫に餌をやってるのを見たことあるわ」
「おじさんが?」
「そうそう、だから行こ!」