僕等の青色リグレット
地面を叩き付ける雨はさらに強くなり、辺り一面まるで川のようだ。
晴登くんに言われたように持っていたハンカチを子猫の上に掛けた私は、先を走る彼の後を追って必死に足を動かした。途中、何度も子猫の様子を伺う。
しばらくそうやって走って、やっと雨宿りができそうな場所を見つけた頃には全身びしょ濡れの状態になっていた。
子猫が入っている段ボールを地面に下ろし、髪から滴る水滴を絞っていると目が合った晴登くんが「ぷっ」と吹き出すように笑う。
「なんか芙海に出会ってから水浸しになってばっかな気がするなぁ」
「……ばっかって、まだ2回目だよ」
そのどちらも私のせいなのは否めないけど。
海に落ちたときに助けてくれたのもそうだし、今日だって私に会わなければ今頃家にいたはず。背中のリュックからタオルを取り出し「使っていいで」と貸してくれた晴登くんに対し、申し訳ない気持ちでいると、
「おお、やっぱり水難の相が出てるやないか」
彼は私の手の平をまじまじと見つめ、驚きの声をあげた。
「えぇ!?」
「大変や、これは……芙海、なんか水の神さんを怒らせるようなことをしたんか」
「私は何も……、え、どうしよう?」
怒らせるようなことなんて、1つも思い当たらない。
でも、自分でも気が付かないところで何か良くないことをしてしまったのだろうか。もしそうなら私は一体どうすれば……。
「ぷっ、冗談に決まっとるけぇ」
「は? じょう……だん?」
こらえきれないとばかりに肩を揺らす晴登くん。
濡れた前髪をオールバックぎみに流してるためおでこが全開になり、綺麗な形をした眉毛がよく見えている。くしゅっとさせる目尻も、その横にあるほくろも。
「人が真剣に悩んだというのに酷いよ」って言ったタイミングで同調するように子猫が鳴いて、私も笑ってしまった。
晴登くんって見かけによらず、悪戯好きなんだ。