僕等の青色リグレット
「どうや? ちょっとはマシか?」
「うっ、うん」
体の熱さは右側を全てを制し、左側へと侵略し始めている。
照れくさい思いに耐えきれなくなった私は視線を上にあげた。すると、バス停標識のところに貼られたポスターが目についた。
『第53回 神起祭』と書かれている。
「これ、晴登くんたちが出るやつだよね?」
ポスターを指さすと、晴登くんが少しだけ体を動かした。お陰で密着していた右側が離れ、やっとこさ彼の顔が見れる。
「そぉや。芙海は祭りを見に来るんか?」
「うん、夏休みの間はずっとこっちにいるから行くよ。優芽の雄姿も見たいし、島のお祭りに行くのは初めてだから楽しみにしているんだ。晴登くんは大役を任されているんでしょ?」
確か、神楽の鳳という名前の演目だったっけな。優芽いわく色んな演目がある中でもその舞は特別で、誰にでもできるものではないらしい。
練習の時に見た、晴登くんの優雅で綺麗な舞を思い出す。
すごいねって言うと、彼は目を伏せて、
「そぉでもないで」
と、呟いた。
あれれ、もしかして照れているのかな。
「祭りには風子ちゃんも帰ってきてたらいいなぁ、知ってる? 優芽のお姉ちゃん」
「……あぁ、知ってるで」
素っ気ない様子で頷いた晴登くんは、ダンボールの中に手を伸ばして子猫の耳後ろの辺りをカリカリと搔いた。子猫は気持ちよさそうに目を細めている。