僕等の青色リグレット


もしかしたら、神起祭で大役を務めることにプレッシャーを感じているのかな?

だとしたら、あまり煽るようなことを言っちゃいけないな。どことなく元気がなくなった晴登くんをどう励ませばいいか考えていると、子猫が可愛らしい鳴き声をあげた。


「こいつ、ホントに人懐っこいな」

「晴登くんに撫でられるのが気持ちいいみたいだね」


家で猫をたくさん飼っているだけあって、扱いが慣れている。

子猫を優しく撫でる晴登くんの細長い指を横目で眺めつつ、ポスターの方へまた何気なく視線を向けると「伝説が再び現る」という文字が目に入った。


「ねぇ、晴登くん。伝説って何?」

「ん?」

「ほら、あそこに書いてある」

「あぁ、死者に会えるってやつか」

「死者に会える!?」



段ボール箱の中にいる子猫が、ビクリと跳ねた。

どうやら私が出した大きな声に驚いたらしく、晴登くんが人差し指を唇に当てる。それに倣って私も同じポーズをして、「どういうこと?」と彼に尋ねた。


「言い伝えのひとつやよ、神起祭の夜に決められた条件を満たして鉢伏山の神様が眠る祠に行くと、亡くなった人に会えるっていう」

「決められた条件ってのは?」

「さぁ、そこまでは俺も知らん。なぁ……もしかして芙海はハナさんに会いたいと思ってるんか」


躊躇いがちな声が私に投げられた。

死者に会えるという伝説を本気をするなんて馬鹿だと思われても仕方ないなと苦笑すると、晴登くんは優しい瞳でこちらを見ていた。


「芙海にはハナさんにもう1度会いたい理由があるみたいやな」

「……」

「後悔してることを伝えたいんか?」

「――――っ、どうしてそれを」




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