僕等の青色リグレット
祖母の一周忌法要のため前日から島に来た私とお母さんは、今は誰も住んでいない祖母の家の2階で一晩泊まらせてもらった。
着いたのはもう夜で2人ともくたくたになっていたから、丁寧に並べられたお布団を見た瞬間は嬉しくて、ついついダイブしてしまったほど。
波の音を聞いているうちに、気が付けば朝になっていた。
「さぁて、もうそろそろご住職が見える時間だけぇ、ねぇちゃんも芙海ちゃんも着替えておいで」
「あら、もうそんな時間? じゃぁ2階で着替えてくるわね。芙海行きましょ」
「うん」
すでに喪服を着ている和枝おばさんは、奥の部屋でゲームをしている祐ちゃんと健ちゃん(おばさんの息子で、私の従兄弟)たちにも声を掛け、ざぶとんを畳の上に広げていく。
程なくして私たちが1階に下りた頃にはご住職がみえており、祖母の一回忌法要が慎ましく始まった。
島で1番の働き者と言われていたおばぁちゃん。
通称、ハナばぁちゃん。
元気で明るくて、誰からも愛される自称マドンナだったおばぁちゃんは去年の夏、畑仕事の途中で倒れ、そのまま亡くなってしまった。
『良い写真だね』
遺影のおばぁちゃんは笑顔で、みんなが褒めてくれたけど。
どうしてだろう? 私には悲しんでいるように見える。
おばぁちゃんが亡くなったと知らせを受けたとき、私はすぐには信じることができなかった。悪い冗談か、それとも酷い夢を見ているだけだと思った。
島に行ったら茶目っ気たっぷりの笑顔を浮かべたおばぁちゃんが「びっくりしたか~」って出てきてくれるはず。そう祈った。
だけど、おばぁちゃんは棺桶の中で眠ったままピクリとも動かなかった。
あれから1年、私は未だにおばぁちゃんの死を信じられないでいる。
「(ごめんね)」
焼香の順番が回ってきた私は謝罪の気持ちを込めて、香炉に抹香をくべた。