僕等の青色リグレット
3、親子の絆
神起島の夏は気温が高い割に湿度が低い。
その日も35度を超す猛暑日だったけれど空はカラリと晴れており、綿菓子のような入道雲がいくつも浮かぶ夏らしい天気だった。
午前中は神楽の練習の見学へ行き、午後から島の図書館に来ていた私は、『死者に会える』という伝説について調べていた。
とは言っても何からどう調べていいのか分からないため、島に関することが書かれている本を片っ端から読んでいくという地味な作業。
時間が経つのも忘れ没頭していると、目の前に積まれた本の隙間から優芽が顔を覗かせた。袴姿の彼女は、グダーと腕を伸びし上半身を机にくっ付けている。
「なぁ、本当にこれ全部、読むんか?」
「そのつもり。優芽は練習で疲れてるでしょ? 先に帰ってていいよ」
「いや帰っても暇やけぇ、それはいいんだけど。伝説なんて調べてどぉすんだ?」
「夏休みの自由課題にしようと思って」
というのは、もちろん嘘だ。
図書館の場所を教えてもらうのに、優芽には「伝説について調べたい」と話したけど、その本当の理由については言わなかった。
もちろん言ったとしても、優芽は笑ったり馬鹿にしたりしないと思うけど、私自身まだ信じられない気持ちがあるからだと思う。
いや、違うな。
話してしまうと、”信じられなく”なる気がするからだ。
それくらい伝説に対して情報が少なく、大人たちにさりげなく聞いても方法について知っている人には今のところ出会えていない。