僕等の青色リグレット
島の子と自分を比べて自己嫌悪。
この感じ何かと似ていると思いながら、広げている本のページを捲った。
それはまだバレエを習っていた頃のこと、周りの子がどんどん上手くなっていくのに対し、自分だけが置いてきぼりをくらうような感覚。
劣等感、焦り、苛立ち、逃げ出したいと思う気持ち、そんな自分が情けなくて――。
また、ページを捲る。
ろくに内容も読めていないうちから次々捲っていると、ふいに晴登くんが呟いた。
「芙海はそのままでいいと思うで」
「え?」
「色んな感情を押し殺していたんやなぁ、辛かったな」
「……見えるの?」
晴登くんはそれに答えず、軽く微笑んだ。
開けっ放しにしてある窓からそよ風が入り、彼の前髪を揺らす。
「芙海は、その、俺のことが気持ち悪いって思わんのか」
「気持ち悪い? どうして? 思うわけないよ。誰がそんなこと言ったの?」
「いや、」
感情のオーラが見えるという彼の話は、私の中で不思議と自然に受け入れられるものであって、特技の1つとして思えるくらい。
「優芽は晴登くんのことを、神童だって言ってたよ」
「神童か、懐かしい呼ばれ方やな」
晴登くんは軽く頷いて、睫毛を伏せた。
神童と呼ばれることにあまり嬉しそうな感じはないけれど、私はピッタリだと思う。だって、彼と過ごしていると穏やかな気持ちになれるし、ぽかぽか背中が温かくなるから。
それってオーラが見えるということとは別に、他の力もあるのかな。
そんなことを考えていた時。
ひと際、強い風が吹いて、テーブルの上にあるいくつかの本がパラパラッと捲れた。
晴登くんが持っていた新聞も、大きくはためく。
「すっごい風だなぁ……あれ?」
「どうしたの?」
「芙海、これ」