僕等の青色リグレット
晴登くんが指さしているのは、とある新聞記事だった。
それは今から50年ほど前のもので、神起祭について書かれている。そのこと自体は珍しいことじゃない。だけど、目を引いたのは、『死んだ娘に会えた』と書かれた見出しである。
「飯島 麻子さん(28)は、2年前の夏に末娘の瑞子ちゃん(3)を亡くしており、3回忌にあたる今夏、死者に会えるという伝説を試してみようと思い立った――――28歳ってことは、今78歳か」
「まだ存命かな?」
「分からんけど、調べる価値はありそうだな」
「うん」
残りの記事には、娘に会えた時の感想や感謝の気持ちを書いてあるだけで、方法については触れられてなかった。
だけど、実際に伝説を起こして死者に会えた人がいる。
この麻子さんという人に会えれば、その方法が分かるはずだ。
うんっと頷きあった私と晴登くんは、新聞に記載されていた麻子さん家の住所を書き写してから図書館を後にした。
「えーっと、磯部ってことは灯台がある方だなぁ」
「ここからどれくらい掛かりそう?」
「30分、いや40分くれぇかな」
「40分……!」
いくら神起島は湿気が少ないとはいえ、この炎天下の中を40分も歩くことを考えると、それだけでめまいが起きそうになる。
だけど、自分で言い出したことだし、文句ってる場合じゃないよね。
よしっと気合を入れていると、後ろから肩をたたかれた。