僕等の青色リグレット
「わー! 気持ちいい!!」
「しっかり掴まってねぇと、落ちるぞ」
目下に広がる海を目指して風を切る。
自転車の後ろに私を乗せてペダルを漕ぎ始めた晴登くんは、ぐんぐんスピードをあげていく。彼の襟足の髪が風にそよぎ、私のスカートも揺れている。
下り坂に入ると自転車はますます早くなり、背中に羽が生えたように軽くなる。そんな今にも飛んでいきそうな体を押さえ、晴登くんの肩にしっかりと掴まる私は流れていく景色を眺めた。
「ほんとに綺麗な島だね」
「んー? なんか言ったか?」
「なんでもなーい」
おばぁちゃんが大好きだったこの島は、どこを切り取っても絵はがきのように美しい。
太陽の光を受けて眩しいほどに輝いている海、青いセロファンを貼ったかのような透き通った空、深緑の山、白い砂浜。
日が傾いても美しさは変わらず、目のも鮮やかなオレンジ色のサンセットに照らされた後には満天の星が輝き始める。
そんなこの島に、いつかね、いつか。
住める日がやってきたら、どんなに素敵だろう。
「この辺りやと思うけどな」
自転車を漕ぎ続けること15分、晴登くんは灯台の近くで足を止めた。
防波堤から少し離れたところに、民家がいくつか並んでいる。