僕等の青色リグレット


「芙海は、いつまでこっちにいるんだ?」

「夏休みの間はずっとだよ。遺品の整理とか相続のこととか色々あるみたいで」

「そぉね、ほんじゃ、いっぱい遊べるね!」


日に焼けた笑顔が弾ける。

同じ歳の優芽とは島に帰省するたびに遊ぶ仲で、ここでの唯一の友達。ここ近年は学校の部活や勉強を理由に帰らなかったけど、手紙のやりとりはずっと続けていた。

素直で飾りっ気のない良い子だ。


「また、あとで来るわ」

「うん」



用事があるらしい優芽が帰ってしまい話し相手がいなくなると、途端に退屈になった。大人たちはお喋りに夢中になっている。

きっとこのまま宴会モードに入るんだろうなぁ。

そう予測した私は私服に着替えて散歩がてら海の方へ向かうことにした。



「やっぱりここは、空気が美味しい」



つい、そんな独り言を零してしまう。

東京から新幹線で3時間、在来線に乗り変えて1時間。

さらに船に乗って30分といったところにある、ここ神起島(しんきじま)は、人口2千人ほどの小さな島で自然のまま手つかずで残されている山と、その山を囲むように広がる青く透き通った海が魅力的なところだ。

また名前の通り神々が起きる島と呼ばれており、伝説も多いと聞く。

母の生まれ故郷とあって小学生の頃は毎年のように訪れていた記憶を頼りに、小道を進むと潮の香りが鼻孔を掠めた。


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