僕等の青色リグレット





「ただいまー」


おばぁちゃんの家に帰ると、台所から良い匂いがしていた。

玄関で靴を脱いでいるところで、廊下の奥からお母さんがひょっこり顔を出す。


「おかえり、遅かったわね」

「うん、ちょっと色々あって」

「遊ぶのは構わないけど、暗くなる前に帰らなきゃダメだからね」


いつもなら、うるさいなぁとしか思わないお母さんの小言も、麻子さん親子のことがあってか「はーい」と素直に返事をする。

当たり前のようにできる母娘のやりとりも、絢子さんはもうできない。

そう思うと急にお母さんのことが恋しくなり、私は洗面所で手を洗ってから台所に向かった。


「晩御飯、何? 手伝うよ」

「あら、珍しい。今日は芙海の好きなハンバーグよ」


うちのお母さんは料理が得意だ。

その中でもハンバーグが絶品で、どこのお店で食べるより美味しい。一方でおばぁちゃんの得意料理は煮物だった。

「私が子供の頃、おばぁちゃんが和食ばかり作るせいで洋食に憧れがあった」というように、お母さんは洋食を作ることが多く、そのほとんどが自己流らしい。

だけど、2人に共通していることが1つあって、「隠し味は愛情」だってこと。

私が時々お母さんを恋しく思うように、お母さんもおばぁちゃんが恋しくなることがあるのかな。

煮干しで出汁を取る味噌汁の味は、どちらも同じで美味しい。


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