僕等の青色リグレット
「君は、東京に住んでるって聞いたけど」
「はい」
「あっちには大学も専門学校もたくさんあるんやろう、受験をすんなら今頃から志望校を決めるんかな」
「だいたいは、そうですけど……?」
よっぽど不思議そうな顔をしていたのだろう。
私と視線がバッチリと合った宮司さんは「いや何でもない」と苦笑し、部屋の奥へと行ってしまった。
神起島の人は幼稚園から高校まで、みんな同じところに通い、高校を卒業したところで就職する人と進学する人に分かれるらしい。
進学する人は本土へ渡り独り暮らしをするか、寮に入るか。
でも、結局は外の空気が肌に合わず帰って来る人が多いから心配だと、お隣の風子ちゃんが大学進学を決めた時に送られてきた優芽から手紙に書いてあったっけ。
風子ちゃんは、外に行ったから体を壊しちゃったのかな?
そんなことを考えている時、部屋の奥から大きな物音がした。
「宮司さん……?」
声を掛けてみるけど、返事はない。気のせいかな? いやそんなはずはない。結構な音が聞こえたもの。
どうも気になった私は「開けますよー」と声を掛けながら襖を横に引いた。すると、畳の上で胸を押さえてしゃがみ込んでいる宮司さんが見えた。
「ど、どうしたんですか?」
慌てて掛けよると、宮司さんは苦しそうな顔を浮かべつつも箪笥を指さした。