僕等の青色リグレット
「く、くすりを、」
「薬ですね? 開けますよ」
どうやら、宮司さんには持病があるらしい。
指で示された桐箪笥を上から順に開けていくと、3番目のところに病院で処方されたと思われる薬の袋が出てきた。それを宮司さんに渡し、お水を汲むため再び台所に戻る。
背中越しに宮司さんの、ふっーと長く息をする音が聞こえた。
「はい、お水です」
「ありがとう」
「私、晴登くんを呼んできますね」
「いやいや、もう大丈夫」
薬を飲んだ宮司さんはそう言って、顔の前で手を振った。
「でも、」
「本当に大したことないんや、じっとしていれば時期に治まるから晴登にも知らせる必要はねぇよ」
「晴登くんは、病気のことを……」
「もちろん知っとるよ、薬を飲めば治まることも知っとる。だから、大事にしなくて大丈夫だ」
宮司さんの言う通り、少しじっとしているうちに宮司さんの顔色は良くなり、乱れがちだった息も次第に整っていった。
何の持病なのかは聞けなかったけど、薬で上手くコントロールできるらしい。発作が出たのは今朝の薬を飲み忘れていたのが原因で、晴登くんにバレると怒られるから知らせたくないんだと、宮司さんは頭を搔きながら笑った。
「さぁ、君は練習に戻りなさい。みんなお茶を待ってるだろ」
「あ、そうだ、お茶」
しまった、うっかり忘れるところだった。
慌てて台所へ戻ろうすると、背後から宮司さんの「そうそう」と何か思い出したような声が聞こえた。
「そこの廊下なんだが、死んだ家内の霊が出るから気を付けるように」
「え!?」