僕等の青色リグレット
「海だぁ……」
そんな当たり前の言葉が口から飛び出す。
海なら島に来た昨日から何度も見ているというのに改めて言いたくなるくらい、ここから見える海は特別きれいで、自然と顔が緩む。
岩と岩が重なり合うようにしてできた海岸を登ってキラキラ光る水面をしばし見つめいると、時がゆっくり巻き戻っていく感じがした。
ザバーンと波が岩に当たる。
『おばぁちゃんー、ここの海はどうしてこんなに青いの?』
『そりゃぁ、透き通っているからさ』
『そうなんだ。おばあちゃん私ね、この島が大好き』
『そうかそうか、島の神様も喜んでいるよ』
『島の、神様?』
『島を好いてくれる人を守ってくれる神様さ。芙海、神様はな、いつも空から見ているんだ、誠実な気持ちを忘れるじゃねぇーぞ』
『誠実な気持ちってなぁに?』
『自分に正直に、嘘をつくなってことだ』
『なぁんだ、それなら簡単だ』
海風が強くなった気がした。
それは、まるで、おばあちゃんが怒っているようで、胸がじわりと痛む。
ごめんね、おばぁちゃん。
決して忘れたわけじゃないんだけど、誠実でいられなくてごめんね。
遠くで海鳥が鳴いている。
あの鳥のように空に向かって大声で叫べば、おばぁちゃんに伝わるかな。もう1度だけ会えないかな。会えるわけないか。
自虐にも似た笑みを浮かべ、
「もう帰ろう」
そう呟いた瞬間、ひと際大きな風が吹いてワンピースの裾を大きく揺らした。
――――と、
「わっ!」
バランスを崩した私は、海に落ちてしまった。