僕等の青色リグレット
「行けそうか?」
「多分……」
こちらを振り向いた晴登くんは心配そうに私を見た。
彼がいるところまで距離でいうと1メートル、高さは50センチくらい下だろうか。気負うものではないが、周りのロケーションもあって怖さが倍増する。
それに、私は――。
「芙海、怖かったら目を閉じてこっちに飛んだらいいで」
「目を閉じる!? そんなの無理無理無視」
「大丈夫や、俺がちゃんと受け止めたる!」
晴登くんは、私の方に向けて両手を広げた。
手を伸ばせば充分に彼の手を掴める距離で、このまま引っ張って貰えれば行けるだろう。あとは勇気だ。
大丈夫、怖くない怖くない。
ここ最近はずっと調子が良いんだから、これくらいの距離を飛ぶくらいなんてないことだ――――。
「おっしゃ、よう頑張った」
「……飛べた?」
「飛んだ、飛んだ、芙海やったな」
「うん!」
いえーいと、ハイタッチ。
勢い余って晴登くんの胸で顔面を打ってしまった私は、嬉しやら恥ずかしいやらで定まらない表情筋を手でほぐした。
頬が熱い、胸がドキドキうるさい。
そのお陰もあって、怖さはすっかり忘れていた。